第1068号 退学したい
こんばんは。パピーいしがみです。
コロナウイルスで窮屈な暮らしをされていると思いますが、皆さん、お加減はいかがでしょうか?
今週は、海外の様子が報道されることが多く、フランスでは外出制限が出て、警察官がそれを取締まる・・・など、まさに非常事態を感じます。
それから比べると、日本の場合は自主規制で、諸外国から見れば、しばりもかなり緩やかです。
世界各国の緊張感との温度差があるのは、やはり日本ではある程度抑え込みができていて改善に向かっているからなのだと思います。
当初は取りやめが多かった卒業式も、形を変えての実施を決められた学校も増えているようで、
このまま感染を抑え込み、一日も早く日常が戻ってくれることを願うばかりです。
さて、今日は高校の卒業式を迎えた梨衛門さんから頂いたメールをご紹介したいと思います。
梨衛門さんの長男さんは、サッカーが上手で、スカウトを受けて高校を決めたのですが
その子が2年制の時に「部活を辞めたい」「退学したい」と言い、ご相談を頂いたことがありました。
その梨衛門さんの長男さんも今年卒業で、ご報告を頂いたのでご紹介したいと思います。
ココから・・・
パピーさん、こんにちは。お世話になっております。梨衛門です。
以前、ご相談をさせていただいていた長男ですが、先日、卒業式が行われ、無事に高校生活を終えました。
卒業式は、中止にする考えもあったそうですが、規模を縮小し、保護者の観覧も無くして、クラスごとの式で行われました。
この息子が2年生になった夏ごろに部活の3年生ともめて「サッカー辞める」「学校も退学する」と言い出して、
パピーさんにどうしたら子供を復帰させられるか相談させて頂いたのですが、
パピーさんのお返事は「説得しようとしないで子供の気持ちをじっくり聞いてください」でした。
私からすると、子供の興奮状態を鎮めて、冷静に考えさせ、もう一度サッカーに向き合うように説得したかったのですが、
「それって親の願い通りにしようとしてはいませんか?子供の気持ちを無視してしまうと最悪の場合もありますよ」と言われてぎょっとしました。
長男は中学校では2年生からレギュラーで、チームの中心でした。
優勝こそありませんでしたが、県大会でもベスト4に入り、グラウンドで生き生きとサッカーをしている息子を見ることが、私たち親の楽しみでもありました。
高校を選ぶ時も、数校からお誘いを頂き、悩みに悩んだ挙句に決めた高校で、
熱心に誘ってくれた監督さんや、お断りした他校の先生、応援してくれていた近所の皆さんにも「サッカーを止める」なんて言えないと、親の体面を優先してしまっていました。
ですがパピーさんから「それだけ熱心にやっていたサッカーを辞めると言うには理由があるはず」
「まずは話を聞いてあげて」とアドバイスを頂き、冷静になって子供の気持ちを聞かねば!と考えを変えるよう努めました。
主人は頭っから「サッカーも学校も辞めさせない!」という状態でしたので説き伏せるのは大変でしたが、
「躓くことが今のこの子の勉強なんだから」と何度も夫婦で話し合って、
子供の人生を親のエゴで無理強いするのはやめよう、と主人もしぶしぶ納得してくれました。
ですが、最初のスタンスが「辞めるな!」だったので、親はわかってくれないと思ったのか、
その後「話し合おう」と言っても「いい」「自分で考るから」と言うだけで、理由を聞いても口を閉ざすばかりでした。
ただ監督さんは「いきなり辞めなくてもいい、しばらく離れてみて、本当に辞めたくなったら言いなさい」
「サッカー推薦での入学でもサッカー部にいなければならないわけじゃない。サッカーを辞めても学校は辞めなくていいんだからな」
と言ってくださり、とりあえず「学校をやめる」という選択肢はなくなりほっとしました。
今まで一緒に練習をしてきた仲間は連絡をくれたり、訪ねてもくれたのですが、「ちょっと時間をくれ」と、自分から関りを断ってしまったようです。
その頃は、言葉も少なく、自分の部屋にこもり、いつもぼーっとして宿題もせず、学校に行くことも辛かったようです。
そんな期間を過ごし、上級生が卒業して、自分たちが3年生になった時、やっと息子はサッカーを辞めようとした理由を話してくれました。
その高校は、サッカーの強豪校で、ポジションの熾烈な競争があり、その能力に合わせて1軍~4軍までありました。
どの子も一生懸命にサッカーをやってはいるのですが、やはりそれぞれの能力によって、3年生でもレギュラーになれない場合もあります。
そうなると上級生の嫉妬やひがみなどもあり、下級生を「生意気だ」と詰め寄ったり、
下級生のちょっとした態度を数時間説教したり、どうやら隠れての暴力もあったそうです。
いつも試合に出ている選手たちにはいざこざはないものの、レギュラーになれない選手間では過去からの慣例だったみたいです。
小学校・中学校時代はレギュラーで活躍できていたので、そんな経験はしていなかった息子ですが、高校に入って力の差を感じて、
挫折を味わっている中での理不尽な上下関係に「もうこんなところにいたくない」と思ったようです。
しかしそれを言えば、もしかしたら大事になって選手権なども出場停止になるかもしれないし、
そんな中でも頑張ってレギュラーになった同級生の事を考えると、自分がみじめに思えたり、
父親にも「お前はサッカーから逃げた!」などと言われ、何をする気にもならなかった、との事でした。
やっと自分の気持ちを話してくれた長男に「1人でこんなに悩んでいたんだな、それを知らずに追い詰めてしまっていたんだな」と申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
3年生になり、監督であった顧問の先生が、学年主任だったことから声を掛けていただく機会があり、
息子の宙ぶらりんでいる状態についてお詫びするとともに、やっと聞き出せた「なぜサッカーを辞めたいと言い出したのか?」をお話しさせて頂きました。
ちょうどスポーツ界でも指導者のパワハラが問題になっている時でもあり、先生も学年の隔たりをどうしたらよいか考えていたらしく、
すぐにサッカー部内でパワハラ対策について話し合いをしてくださったそうです。
その結果、パワハラ委員会を設立し、それぞれの学年から2人ずつ対策委員を出し、3年生から委員長を選出することになったそうです。
そこで息子の友達が、委員長には息子が適任では?という事で、もう一度、サッカーをやらないか?と連絡をくれました。
息子は1年もサッカーから遠ざかっていた事もあり一旦は断ったようですが、
何度も誘ってくれる友達の熱意に折れて、サッカーの練習にも顔を出すようになりました。
(結局、委員長は辞退して、委員の一人になりました)
半年以上のブランクはやはり大きくて、レギュラーにはなれませんでしたが、
それでもふさぎこんでいた今までの姿とは違い、休日の練習後はマックに行ったり、カラオケに行ったり、以前の明るい息子が戻ってきました。
特に先輩・後輩のギスギス感はなくなり、何よりこの1年、1人も退部者がなかったことは、創部始まって以来の事だったそうです。
サッカーから遠ざかり、目標を失ってしまった息子ですが、今回のことで「将来は指導者(学校の先生)になりたい」と新たな目標ができ、1年浪人して来年大学受験をすることに決まりました。
息子のこの3年間を考えてみて、パピーさんの言われる「認める」が、如何に大事なのか身に染みて学ばせて頂いた期間となりました。
明るく、積極的で、活発な子だったのに、サッカーで壁を感じ、そこに合わせて先輩から受けた嫌がらせ。
サッカーだけが自分の支えだったのに、それがもろくも崩れ去り、悩みを打ち明けようとしたのに、聞いてあげようとしなかった私たち親。
(私たちはサッカー以外で子供を認めていないのでした)
自分の存在価値に疑問を持ち始めたら、何をするのも嫌になって、すべてのやる気を失ってしまった。
その期間の長男の落ち込みっぷりは本当にひどく、声も掛けられない状態でした。
それでも、かつてのチームメイトたちが戻ってくるように促してくれた事。
部活に顔を出した時にも、以前と変わらず接してくれた事。
自分の技量は優秀な子には適わなくても、サポートをしたり、練習相手になったり、できることは沢山あると知った事。
練習に汗を流しながら、パワハラ対策委員として、1・2年生にも気を配り、声を掛け、下級生からも信頼してもらった事。
復帰後は最後までやり遂げ、今までとは違った新しい目標も持てた。
息子にとって順風満帆ではなかったし、親にとっても描いた3年間ではなかったものの、とても貴重な3年間で、吸収できたことも多かったと思います。
もしあの時、頑なに「サッカーを続けろ」と言っていたら、息子の今は無かったかもしれません。
ココまで・・・
長男さんが3年生になってサッカーに復帰しました、というご報告は頂いていましたが、
今は新しい目標を持って、来年の受験に向けて進み出したと聞けて、私もうれしかったです。
梨衛門さんのお返事の中に「子供の気持ちを無視してしまうと最悪の場合もありますよ、と言われてぎょっとした」と書かれていましたが、
この時の「最悪の場合」とは学校を辞めることではなく、子供が自ら命を落としてしまうケースもある、と、その事例をお話ししたのでした。
梨衛門さんの場合は、親に「部活を辞めたい」と言ってくれたのですが、
私がお話ししたお子さんの場合は、親が期待しているのがわかっていたので、自分の気持ちさえ親に言えなかったのですね。
誰にも相談できず、自分で出した答えが自分の命を絶つことでした。
原因に部活での孤立、上級生からの嫌がらせがあった、という事が後でわかったのですが、そうなってからでは取り返しがつきません。
そんな最悪な事にならないように、梨衛門さんには「説得をしようとせずに、子供の気持ちを聞いてあげて」とお返事したのでした。
その後、梨衛門さんからはこんなメールを頂きました。
ココから・・・
卒業式には参加できなかったものの、主人と私と長男で、学校の正門で写真を撮りました。
その時に長男が「まだしばらくお金がかかりますが、よろしくお願いします」と主人に頭を下げました。
サッカー辞める・退学すると言って以来、あまり口をきかなかった長男でしたが、急に大人になったな~と思った瞬間でした。
能天気な次男は「じゃあ、俺は留学しよっかな~」なんて言っており、父親は「そんな金どこにあるんだよ!」と突っ込みながらも笑っていました。
時間はかかりましたが、やっと今回の問題は解決したのかな?と思います。
今回、パピーさんから「メルマガでご紹介させて頂きたいのですがどうでしょう?」とご連絡を頂いた時には驚きましたが、
子供から相談があった時には、きちんと聞いてあげないとこうなりますよ、という悪い見本として気を付けていただければ・・・と思い、お願いしました。
子育ても終盤になって、こんな試練があるとは思っていなかったのですが、いつの間にかパピーメソッドを忘れ、押しつけになっていました。
でも結果的に、長男は挫折を乗り越え、希望をもって新しい扉を開き、精神的にも成長できたことを考えると、今回の躓きもパピーさんの言われる「必要にして善」だったのかな?って思っています。
精神的につらかった時も、パピーさんから適切なアドバイスを頂けてありがたかったです。
これからもご相談をさせて頂くことがあるかと思いますが、よろしくお願いします。
ココまで・・・
梨衛門さん、ご報告をありがとうございました。
長男さんも、初めての挫折でかなり長いこと悩み、落ちこんでおられたようですが、その間ずっと不安の中、我慢しておられた梨衛門さんもよく頑張られたと思います。
時間はかかったものの、退学もなく、サッカー部にも戻り、きちんと卒業。
その上、自分の将来も見据えることができて、もしかしたら一番いい形になったのかもしれません(^^)
サッカーでのレギュラーは取れなかったですが、自分の経験をもとにいい先生になってくれるのではないかな?と思います。
あと数年。親も頑張らねばなりませんが、楽しみですね♪
メルマガへのご紹介のご許可、ありがとうございました。
※ご興味がありましたら、ご覧ください。
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【 パピーいしがみ 】人材育成の現場から、育児・子育てこそが、本人の一生のベースになると痛感し、吸収したノウハウやアイデアを自分の3人の子育てに応用。子供達が喜びと自信を持って成長していく中で、親としての充実感と予想をはるかに上回る結果に驚愕する。2003年あまりの少年犯罪の多さ、幼児虐待の事件に心を痛め、その子育て育児方法をインターネットで公開。熱烈なサイトのファンからの要望で、テキストを作成し通信講座として紹介。著書も好評で現在は会員さんから毎日届く悩みや相談に応えている。