第1081号 自由がない
こんばんは。パピーいしがみです。
先週、テレワーク中のお父さんが、長女さんを車で学校に送り届けたあと、妹さんを保育園に連れて行くのを忘れて、
自宅に戻りテレワークで仕事をし7時間後、車に残されていた2歳の妹さんが熱中症で亡くなってしまう・・・という、なんとも悲しい事故がありました。
私の妻も「保育園に届け忘れるって・・・そんな事あり得る?!」と憤っていましたが、
マルチタスク(複数の作業を同時に行う)が優れている女性の脳に比べて、男性の脳はその方面は劣っているそうで、
もしかしたらお父さんは「今日はあれをやって、これをして・・・」と、仕事の事で頭がいっぱいだったのかもしれません。
どちらにしても「ついうっかり」が取り返しのつかない事故につながってしまう・・・と強烈に教えられたニュースでした。
暑くなると必ず起きる、車中での熱中症事故。お気を付けくださいね。
さて今日は、子供から「僕には自由がない!」と言われて悩んでしまったHOSHIママさんからのご相談を紹介します。
HOSHIママさんからはこんなご相談を頂いていました。
ココから・・・
いつもお世話になっています。HOSHIママと申します。
パピーさんからのメルマガは、悩んでいる時にちょうどいいタイミングで届いて解決に向かったり、ほろっと涙を流したり、過去の記事で癒されたり、本当に助かっています。
私も仲の良い親子、ステキな家庭を築きたい!と頑張ってきたつもりなのですが、どう対処してよいかわからなくなってしまって、ご相談させて頂きます。
私には3年生になる男の子がいます。特別優秀なわけではありませんが、明るく元気で友達とも遊べるし、勉強も普通ぐらいにはできる子です。
ですが一人っ子で甘やかしてしまったからか、3年生になってから口答えがひどく、子供の言葉にカチンと来てケンカになってしまいます。
お風呂も入らずテレビを見ているので「テレビを止めてお風呂に入りなさい」と言うと「あと10分だけ」とか「あと5分だけ」と言いながら10時近くになってしまい、
「いい加減に入りなさい!」「うるさいな!一日ぐらいはいらなくたって平気だよ!」「平気じゃない!汚れた体でベッドに入ってほしくないんだよ!」
と、ああ言えばこう言う、が延々と続いて、最終的には「うるせーガミガミババア」と捨て台詞を吐き、やっと入る・・・という状態です。
その後は、まだ小学校低学年らしく、不機嫌な私を見て「ママ、さっきはゴメンね(甘えるときには私の事をママと呼びます)」と申し訳なさそうに言うので私も許してしまうのですが、こんな事が日常茶飯事で起こります。
ある時、宿題もせずに1時間と決めているゲームをやり続けていたので「もうゲームは終わり!」「宿題はできたの?」「宿題を先にやる約束でしょう!」と言ったら、
「僕には自由がない!」「A君もB君も家では自由にゲームをしているのに、なぜ僕だけゲームをやらせてもらえないんだ!」「もっと自由があってもいいはずだ!」と涙ながらに言われました。
子供の「僕には自由がない!」と泣きながら言われたことが、私の幼少期辛かった時と重なってしまってとてもショックで、
子供に「勉強しなさい」と言ったり、「お風呂に入りなさい」と言う事は子供の自由を奪っているのか?
こんなに自由にさせているつもりなのに、まだ足りないのか?と悲しくなりました。
私は3人姉弟の長女として育ちました。両親が共働きだったので下の子たちの面倒を見て、友達と遊びに行けなかったり、
妹や弟とケンカしても「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」と言われたりして、
「なんで私だけ怒られなくちゃならないの」「お姉ちゃんなんかに生まれなければよかった!」っていつも不満がありました。
そして子供が生まれたら、のびのび自由に育ててあげたい!と思っていました。
なので余計に「僕には自由がない!」の言葉にショックを受けズーンと落ち込み・・・
「私の時と比べたら、こんなに自由なのに、まだ自由を要求するのか?」ととてつも無い怒りがわいてしまい、パピーさんに聞いてもらおうと思い立ちました。
子供には節度を持った生活をしてほしいし、でも強制も命令もできればしたくない。
これだけ自由を与えているのに、まだ文句を言うなんて、もう全部好きにさせれば満足するのでしょうか?
本人の思い通りにさせてあげれば、そのうち飽きて時間を守ったり、勉強に興味が向いたりするのでしょうか?
何かアドバイスを頂けましたら幸いです。
ココまで・・・
HOSHIママさん、ずいぶんとご立腹で、子供への怒りが文面からあふれ出ていますが、ここで「それじゃあ勝手にしろ!」と投げ出してほしくはないんですね。
子供たちも年齢が上がってくると、理論的になってきて、権利や義務、又、今回のように「自由」などの言葉を使ってくるようになります。
親からすると「素直じゃない」とか「憎たらしい」とか「めんどくさい!」思われるかもしれませんが、
これも成長の証で、ただの癇癪よりも理屈を言い出した時の方が納得させやすい場合もあります。
なので私はこんな風にお返事しました。
ココから・・・
HOSHIママさん、こんにちは。パピーいしがみです。
息子さん、「僕には自由がない!」なんて言い出したんですね♪
でも、これってある意味、すごくいいことなんですよ♪
と言うのは、今まではただ「やりたくない」とか「嫌だ!」と癇癪を起していただけだったのが、理屈をこねて自分の権利を主張しだした、という事でもあり、
そこには理論的な考えをするようになった成長がある、ってことだからです。
そして理屈をこねて文句を言うのであれば、親も理屈で納得させることができやすくなります。
今回、HOSHIママさんが、自分の子育ての中で「自由にさせてあげたい」「できるだけ怒りたくない」という思いもあって、
子供の「僕には自由がない」と言い出した息子さんにショックを感じてしまったようですが、
先に結論を言ってしまえば、今がとても大事で、今こそ親の毅然とした態度を示してほしいのです。
まずは「自由って何か?」をちょっと考えてみましょう。
「自由」って「束縛を受けず、自分の意思で選んだり行動したりできる」ってことですよね。でも「何でも自分の好きにしていい」訳ではありません。
よく「自由には責任がつきものだ」と言われますが、それを言っても子供には響きません。(なぜなら本質的な自由はわかっていない場合が多いからです)
ですからまずはHOSHIママさんに「自由とは何か?」をきちんと把握しておいてもらいたいのですが、
この「自由」って、日本国憲法の中でちゃんと定められているって、ご存じでしたか?
日本国憲法 第3章(国民の権利及び義務)の中の12条に『自由、権利の保持の責任とその濫用の禁止』とあります。
この条項の完全な解釈は難しいのですが、“自分に自由があるように、人にも自由があるのだから、自分の自由ばかりを求めてはいけないよ!”という事のようです。
考えてみれば当然ですよね。
どんなに自由が認められていても、それで誰かが迷惑や被害を被ってはならないわけです。
ですから『自由や権利を濫用してはならない』と定められているのです。
家庭内だって同じです。1人だけ好き勝手をしていれば周りの人は迷惑に感じます。だから家庭でもルールを作る必要があるんですね。
話を「自由」に戻しますが、上記の事を総合すると「自由」とは
“ある一定の枠の中ならば、あなたの好きにしてもいいけど、その枠を外れることがあってはならない”という事で
『完全な自由なんて無いんだ!』ってことなんです。
という事は、息子さんが「僕には自由がない」と言った言葉も「そんなの当たり前」「あなたにそこまでの自由は与えていない」
「あなたの言っていることは、あなたに与えた自由の範疇を逸脱している」と考えて頂いていいのです。
そしてHOSHIママさんの言葉に「これだけ自由を与えているのに、まだ文句を言うなんて、もう全部好きにさせれば満足するのでしょうか?」とありましたが、
これは全く逆で「自由を認められると、人はさらにそれ以上の自由を求める」のです。
人は誰でも楽をしたいので、自分の思い通りになることをどんどん求めて不足を訴えるようになるのです。
だから自由の枠を広げれば広げるほどさらに自由を求め、傍若無人にふるまうようになるのですね。
ですからどこかで「これ以上は自由にさせないよ!」という明確なラインが必要なんです。
そしてもう一つ。
教育基本法の中には第10条に「家庭教育」という事でこのように明記されています。
“父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする”
子供がなかなか風呂に入らない、約束を守らない、に対しては「必要な習慣を身に着けさせる」為に叱ることも必要で、「どんどんお風呂に入りなさい」と怒ったっていいのです。
勉強について書かれていましたが、勉強についてもちゃんと法律に明記されています。
とても有名ですが教育基本法の第4条「義務教育」です。
ここには“ 国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う”とあって、
もちろんここでいう国民とは親の事で『子供が勉強をしなければならない』と言っているのではありません。
でも親には『子供に義務教育を受けさせる義務がある』と書かれているんですね。
ですから「お風呂に入りなさい」も「勉強をしなさい」も何も悪いことではなく、親として正しい叱責をしているのであって、
子供が「自由がない」と言ったとしても「そうだよ。なんでもやっていいなんて自由は誰にもないんだよ!」とお考えになってほしいのです。
ただ、それをあまりに強制的に使ってしまうと、子供は不満を抱くでしょうしギスギス感も現れてしまうので、
権利や自由は認めながらも「あなたに与えらえた自由はココまでだよ」と、しっかり子供に教え込む事はしてほしいのですね。
それが私がメルマガ等でよく言う「ダメなものはダメ」という親の姿勢なのです。
特に今回のように、子供が自分の権利ばかりを主張した時はビシッとメリハリをつけてNO!を突き付けてほしいと思います。
息子さんが成長し、自由や権利などを言い出すようになった今、
「自由って何か」「権利って何か」「どんな法律があるか」などを調べて(できれば法律書などを見せながら)子供と真剣にぶつかってみるって事もいいのでは?と私は思います。
それでも「A君もB君も好き勝手やってるじゃないか!」みたいなことを言うようなら、
「A君、B君の親は何を考えているかは知らないが、あなたがそれをうらやましいと思うのなら、A君でもB君でも、その家の子にしてもらいなさい」と言って突き放してもいいと思います。
・・・とちょっと厳しい話をしましたが、多分、息子さんはあまり深くは考えず「もっとゲームをしたい」「もっと遊びたい」という気持ちを『甘えられるお母さん』にぶつけたのだと思うのです。
本当は子供も「ダメって言われるだろうな」と思いながら、あわよくばもっとゲームができたら・・・とか、勉強をしなくてすむなら・・・ぐらいの気持ちだと思うのですね。
ですが甘い顔をしていると、どんどんそこに付け込んでくるので、その時にはビシッとした線引きが必要なんです。
ただその前に、テレビの見ていい時間、ゲームをやっていい時間、そして寝る時間、きちんと決める、という事が必要ですし、
できれば親が勝手に決めるのではなく、子供と話し合って決めておくことをしてほしいのです。
もちろんその時には「もしできなかったら」も決めておいて、そのルールに沿って厳格に対処することは必要です。
きっと今、「僕には自由がない」と言って、HOSHIママさんがショックを受けていることは感じていると思いますので、
今後何度も「僕には自由がない」と言い「もっと自由をよこせ」と要求してくると思いますが、この今がとても大事な時。
「それ以上の自由は与えない!」と、はっきりした親の姿勢を見せる事が必要だと思いますよ。
ちょっと大変だとは思いますが、是非、頑張って「心身の調和のとれた発達」を目指してほしいです(^^)。
ココまで・・・
このようにお返事したところ、HOSHIママさんから経過報告を頂きました。
ココから・・・
先日、「僕には自由がない」と言われた事にショックを受け、ご相談させて頂いたHOSHIママです。
落胆している時に、すぐにお返事を頂けて、とても心強かったです。ありがとうございました。
お返事を読むまでは「もう勝手にすればいい」「どうなろうとも自業自得。自分で責任を負えばいい!」と完全に投げやりな状態でした。
ですが、パピーさんからメールを頂いて「自由とは何か?」さえも私が把握できていなかったことを思い知らされました。
憲法にも明確に記載されているんですね。
そして他の法律についても教えていただいて「ここで諦めちゃいけないんだ!」ってとても力を頂きました。
私が息子の「僕には自由がない」の言葉にショックを受けている中で、パピーさんの
“「そんなの当たり前」「あなたにそこまでの自由は与えていない」「あなたの言っていることはあなたに与えた自由の範疇を逸脱している」と考えていい”
とはっきり言ってくださった言葉で、私自身、ものすごく楽になれました。
そして「ここが大事なところ」のアドバイス通り、もし次に自由の濫用をした時には、毅然とした態度で臨もう!と決めて返す言葉も準備しておきました。
そしてその時は、意外に早く訪れました。
友達と通信でゲームをやっていて、9時に終わる約束なのにいつまでたっても終わらないのです。
私は9時15分まで待ちました。ですがいつものように「あと5分」「あと3分」と言って終わりません。
「お母さん、今日はもう許さないからね。15分を過ぎたらコンセントを抜くから」と言っておきました。
子供はいつものように聞く耳を持たず、15分が過ぎました。
私は何も言わずコンセントを引き抜きました。「ブッ」と言って画面は消えました。
子供は血相を変えて「何すんだよ!」と怒ります。私は「だから15分を過ぎたらコンセントを抜くって言っただろう!」と言いました。
子供は「なんだよ!俺にはゲームをする自由もないのか?」と言いました。
そこで私は・・・
「なんでもやっていい自由なんて誰にもないんだよ!お前がやっているのは権利の濫用だ!」
「もう約束の9時はとっくに過ぎている!それでもゲームがやりたいのなら、この家から出て、よその子にしてもらいな!」
「約束を守らないんだったら、お母さんはご飯も作らないし、洗濯もしない、お前も一人で生きていけ!」
私自身、かなり興奮していたので、もっとひどいことを言ったかもしれませんが、迫力だけは伝わったと思います。
子供は母親の気迫に驚いたのか、唇を真一文字に結んで、涙目でこぶしを握っていました。
その後、子供は一人で風呂に入り、寝室に向かい、泣きながら寝たようです。
私もあえてご機嫌取りのようなことはせず「私から折れるようになことは絶対にしない!」と決め、できるだけ普通に過ごすようにしました。
それから2・3日は、なんとなく会話も少なかったのですが、驚いたことに、その日から、約束をきちんと守るようになったのです。
ゲームの時間も9時近くになると時間を気にするようになり、きちんと9時には終わりますし、言われなければやらなかった宿題も、テレビをつける前にやるようになりました。
もちろん「僕には自由がない」も言わなくなりました。
この変わり様にはびっくりで、いささか可愛そうな気もするのですが、
その私の甘さが、子供のワガママをエスカレートさせてしまったのだと思います。
思えば、私も約束を守れない方で「痩せたい」と言いながら間食がやめられなかったり、始めた運動もすぐに辞めてしまったり・・・。
子供を叱りながらも「自分だってできてないよな」とどこかで心苦しい思いがありました。
でも、こうやって子供に約束を守らせると同時に、私も決めたことは守り、特にこの「自由の境界線」は、持続しようと思っています。
パピーさん、貴重なアドバイスをありがとうございました。
今回、自分でも自由や権利について調べてみて、まだ子供に説明もできていないのですが、今後、同じことが起きないとも言えないので、準備だけはしていこうと思っています。
ココまで・・・
HOSHIママさん、ご報告ありがとうございます。
ちゃんと準備をしてから厳しく叱られた、という事なので、きっとHOSHIママさんの本気度、真剣な姿勢が子供に伝わったのでしょうね。
でもね。私はHOSHIママさんがこうやって(多分一大決心だったと思いますが)毅然と行動されたこと。
子供にはとても良い経験だったと思います。
子供は親の姿勢を常に見ています。そしてそれが本気なのか?そうでないのか?は簡単に見抜くのですね。
子供が成長し、自分の権利や自由を要求し、もし親がそれに負けてしまったり、さじを投げたりすると、
子供は「親なんて論破するのは簡単だ!」と認識し、あらゆる理屈をこねて、自分の都合のいいように親を動かそうとするのです。
でも「あ、うちの親にはこういう筋が通った部分があるんだ!」と発見すると「あんまり舐めてちゃいけないぞ」と緩んだ気持ちが引き締まります。
それと同時に「うちの親はしっかりしている!良かった♪」と安心もするのです。
子供から大人に変わる時期、親も試されることが現れてきますから、是非、ご自分のお考えをしっかり持って、子供と接するようになさってくださいね♪
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【 パピーいしがみ 】人材育成の現場から、育児・子育てこそが、本人の一生のベースになると痛感し、吸収したノウハウやアイデアを自分の3人の子育てに応用。子供達が喜びと自信を持って成長していく中で、親としての充実感と予想をはるかに上回る結果に驚愕する。2003年あまりの少年犯罪の多さ、幼児虐待の事件に心を痛め、その子育て育児方法をインターネットで公開。熱烈なサイトのファンからの要望で、テキストを作成し通信講座として紹介。著書も好評で現在は会員さんから毎日届く悩みや相談に応えている。