第1110号 自立は急がない
こんばんは。パピーいしがみです。
今日のメルマガは「自立は急がない」としました。
というのは、自立を急ぎ過ぎ(又、成果も出ていたので)て子供の気持ちに気づけなかった、とご相談を頂いていた例があったからです。
昨年の2月、ミモザさんからは、こんなご相談を頂いていました。
ココから・・・
4歳の女の子と、6ヵ月の男の子の母、ミモザと申します。よろしくお願いします。
私が悩んでいる事は、上の子の赤ちゃん返りです。
「赤ちゃん返り」というと可愛く聞こえるかもしれませんが、娘の様子は全く向上心を失ってしまい、精神年齢も後退してしまっているようで困惑しています。
4年前、娘が生まれた時、とても元気で、ミルクも良く飲み、言葉も早く、1歳児検診の時には、もうお話ができるほどでした。
私もすぐに働きたかったし、早い自立を望んでいた私にとって娘の成長は好都合で、困ったのは保育園に預け始めた時に、2日間だけぐずったことぐらいです。
保育園でも、いろんなことを他の子よりも早く覚えて、言葉も早いので、先生にも褒められ、私も鼻高々でした。
(でもそれは親の育て方が良かったわけではなかったことに後々気づきます)
娘は歩くのも早く、2歳になる前に「自分でやる!」と言い出し、靴も自分で履いたし、歯磨きも自分からするようになり、
手伝おうとすると「できるから!」と嫌がり、着替えもどんどん自分でやってしまう子でした。
トイレトレーニングも早く、ほとんど苦も無くできるようになってしまい、本当に楽でした。
こんなに吸収力があるのだから、と2歳から始めた英語もすぐに上手になり、3歳ではネイティブの発音で私よりもずっと上手に先生と会話ができるほどでした。
3歳から公文も始めました。こちらも保育園に行く前にプリントを渡し、毎日5枚ペースでどんどん進みました。
ですが、下の子が生まれてから一変しました。
久々の赤ちゃんはとても可愛くて、特に親離れの早かった姉と違い、全身で私を求めてくれているので、上の子よりも愛おしく、
「この子はこんなに私を求めてくれる。この子には私が必要なんだ!」と久しぶりの新生児に大きな喜びを感じていました。
多分、その気持ちが上の子にも伝わってしまったと思います。
娘が「保育園行きたくない」「ママと離れたくない」と言い始めました。
その頃何かと「ママ、見てて!」を連発していましたが、私の中では、娘は“自立ができている”という認識で、
娘が「見てて!」と言っても「ねえ、すごい?」と言われても「見てるよ!」「うん、すごいね」と(気のない返事で)、子供の気持ちに添えていなかったのだと思います。
だんだん娘は癇癪を起したり、「できない」とぐずったりして、自発的な行動が見られなくなりました。
ごはんも「1人で食べられない」と言ったり、着替えも歯磨きも「1人でできない」と。
最初の頃は「ああ、赤ちゃん返りなんだな」と思って「どうしたのかな?〇〇はもうできるはずだよ」と優しく言っていましたが、
「できない」はどんどんエスカレートして、弟に手を掛けている時ほど私の手を煩わそうとします。
パパが優しく「パパがやってあげるからおいで」と言っても「イヤだ!ママがいい!」と泣いてききません。
私も次第に余裕がなくなり「今までは一人でできていたでしょう」「ちゃんとしなさい」
「泣くのを止めなさい」「そんなことで泣くなんておかしい」などと怒ってしまうようになりました。
すると娘のイヤイヤはさらにエスカレートして「プリントできない」「英語の習い事も行けない」と言い出し、なんとお漏らしまでするようになってしまったのです。
今、公文も英語もお休みをしています。
私が怒り過ぎてしまったのは分かるのですが、もうこの状態が4ヵ月も続いています。
元の娘に戻ってほしいのですが、アドバイスを頂けたらうれしいです。よろしくお願いします。
ココまで・・・
とこんな内容でした。
私もこのご相談を頂いた時に、ミモザさんはもうわかっているみたいだな。と思いましたがこんな風にお返事してしました。
ココから・・・
ミモザさん、メール拝見しました。
娘さんの赤ちゃん返り、かなり強いみたいですね。
ミモザさんからのメールを読んで「ミモザさん、もうわかっているんみたいだな」と感じましたがどうでしょう?
が、ちょっと感じた事もあるのでそれについてもお聞き頂きたいと思います。
まず「分かっているみたい」と私が感じた事は、ミモザさんご自身が、娘さんと息子さんとの接し方に『差』があって、娘さんにも不安を抱かせてしまっている事。
そして娘さんが「もっと見て」「もっと関心を持って」と訴えてきた時、あまりそれに応じてあげられなかった事。
ご自分でも「もっとお姉ちゃんの気持ちを汲んであげなくちゃいけなかったなぁ」とお考えですよね。
でも、一つ、気づいていない事もあるように思います。
それは4歳の娘さんに“自立してほしい”とお考えであることです。
はっきり言って“4歳で自立はしない”のです。
小さいころからとても好奇心旺盛で、何でも上手になるのが早く、理解するのも早い・・・としたら、それってきっともともと持っていた資質だと思います。
ですからきっと今の状況を乗り越えれば、又、元気で積極的な娘さんに戻ってくれるとは思います。
ですがそれをすぐに求めないでほしいし、そもそも「手がかからない」事が良いことではないのです。
子供が能力を伸ばす、そこには必ず「安心感」が無ければなりません。
娘さんがほとんど手を煩わせず、いろんなことが上手になっていたのも、もともと本人が持っていたものだけではなく、
きっと親の(特にミモザさんの)視線を常に感じていて『見守られている』事を認識していたのだと思いますよ。
ミモザさんは「それは親の育て方が良かったわけではなかったことに後々気づきます」と書かれていましたが、
子供が安心して何かに熱中できる環境を作る事だって、とても大事な事で、きっとミモザさんは意識をせずにそれができていたんだと思います。
ですが意識をせずにできていたからこそ、それがそっくり下の子に向かってしまった、と考えると分かり易いのではないかな?と思います。
先ほど私は「4歳では自立はしない」と申しましたが、
私たちは必ず「安全」であることを確認して行動します。
特に幼少期の子供が親から離れるときには、親がそこにいてくれるかどうか確認して動くのですね。
なぜなら親がそこにいてくれたら、何かあったら助けてれると信頼しているからです。(それが「見守る」事になるのですが)
きっと娘さんは「いつだって私の事を見てくれているから大丈夫」と全速力で走っていて、
ふと振り返ったらお母さんが見えなかった・・・という場所にまで離れてしまったのだと思うのです。
そうなれば急激に不安になるのは、とても自然な事で、今の娘さんの状態は決して異常ではないのですね。
ただミモザさんに「自立できていた昔の娘に戻ってほしい」というお気持ちが強ければ、娘さんの不安が全くなくなる、ということは難しいと思うのです。
例えば、私は早期教育については否定的で、あまり低年齢の頃からお勉強や学習に重きを置いてほしくないと考えています。
というのは、子供にとって根底に「安心感」が無い場合、絶対に成果が表れないし、
親が熱心になって学習をさせようとしてしまうことで、かえってその安心感を削ぐことになってしまう可能性があるからです。
本当だったら身に付いていくはずの“意欲”や“自信”が熱心な早期教育の為に置いてけぼりになってしまうのです。
ちょっと面白いアンケートがあるのですが、東大生の8割が子供の頃によくしていたことは「親との会話」だったそうです。
決して誰よりも学習をしていたのではないのです。
それを考えた時、娘さんが今必要なのは「前の娘さんに戻る」事ではなく「私はいつも見守られている」と感じる環境なのでは?と思うのですね。
なので「元の娘に戻ってほしい」は、取り合えずやめて、
今は甘えに応じたり、「1人でできない」と言うことは手伝ってあげる時間だとお考えいただくことだと思うのです。
幸いな事に、ご主人が積極的に子育てに参加してくださるようですから、ご主人がいらっしゃる時には下の子をご主人に見てもらって、
ミモザさんは娘さんとの会話やふれあいを増やしてもらうことを意識されたらいかがでしょう?
それと・・・もし娘さんの小さい時の写真があるようでしたら、スマホの中に置いておくだけでなく、プリントアウトして子供が「見れる」状態にしておくといいと思いますよ。
「私もこんな時があったんだ」「私もこんなにかわいがられていたんだ」と知る事が安心につながりますからね♪
今回の事は、もしかしたら娘さんにとって「手がかかる」初めてだったかもしれません。
ですが「手を掛ける」って子供にもとても大きな意味があって、それこそが「大事にされている」と感じることになるのです。
娘さんの「ママじゃなきゃイヤ」も、息子さんと同じように『全身でママを求めている』ってことです♪
今は、娘さんを安心させてあげることに集中してみてください。きっと不安が解消されると前のような積極的な娘さんに戻ると思います(^^)。
ココまで・・・
このようにお返事をして約半年、ミモザさんからご報告を頂きました。
ココから・・・
パピーさん、お久しぶりにご報告させて頂きます。
赤ちゃん返りで相談させて頂いた娘ですが、やる気もなく死んだような眼をしていた娘に活気が戻ってきました。
パピーさんの仰る通り、私は「この子は一人で大丈夫」と勝手に思っていて、娘を放っておいて息子ばかりを見ていたと思います。
そして以前の何でも自分からやってくれる手のかからない娘に早く戻ってほしいと思っていました。
でも、パピーさんからはっきり『4歳では自立はしない』と言っていただいて、私の気持ちは固まりました。
実はパピーさんの言葉の意味が「こういうことか!」って分かった瞬間がありました。
それは、スイミングのお試しに行った時の事です。
そのスイミングは親が2階で見学できるのですが、プールに向かう時や、先生の話を聞く時も、娘は何度も私を探すのです。
そして、私と目が合うとホッとした表情でプールに向かったり、先生の方に視線を戻したり・・・と、いつも私が自分を見ているかどうか確認していたのでした。
きっと私が弟に関心を向けている時にも、何度も私を確認していたのだと思います。
でも、私は全く気付いていませんでした。
私を確認する度に、全く自分を見てくれていないと分かったら、娘はどんな気持ちだったろう?
その時「本当に申し訳なかった」と深く反省しました。
そしてそれからは(息子の事は大好きですが)それをあからさまに娘の前で見せるのはやめにして、
娘が「〇〇できない」と言ったら根気よく付き合い、癇癪を起した時は抱きしめたり、泣いた時は「たくさん泣いてスッキリしよう」と泣かせるようにしました。
そうやって「できなくてもいい」「甘えてもいい」「泣いてもいい」と、とことん付き合い、
スイミングに行くときには、おばあちゃんに息子を預けて、私は娘だけを見るようにしました。
(スイミングはママとの2人きりのデートなので娘も楽しみにしています)
するとだんだん笑顔が増えてきて、スイミングでは私と目が合うと、小さく手を振るようになり、私も手を振ると恥ずかしそうににっこりするようになりました。
幼稚園でも人が変わってしまったみたいだと心配されていましたが、
「この頃、友達と楽しく遊ぶようになりました」「また、元気な〇ちゃんに戻りつつありますよ」とご報告頂いて、親が見守ることがいかに大切かを痛感しています。
パピーさんお勧めの、スマホに入っていた幼少期の写真もアルバムにして、いつでも娘が見れるようにしたところ、とても気に入って、
何度も何度も見返して、自分も弟と同じように愛されていたんだと確認しているように感じます。
これからは上の子も下の子も、しっかり手を掛けていきます。ありがとうございました。
ココまで・・・
と言う内容でした。
年明けすぐにも年始のご挨拶を頂いて「あれからどうですか?」とお聞きしましたら、
“今は、赤ちゃん返りのような仕草はほとんどなくなって、下の子がぐずるとあやしてくれたり、「お姉ちゃんがやってあげるよ」と抱っこしたりして弟への対抗意識がなくなりました”とお返事頂きました。
そしてこうもありました。
“今回の娘の赤ちゃん返りがなかったら、私は子供の自立を望んでばかりいたと思います。でもそれは間違っていたことが良くわかりました”
“もちろん将来的には必要な自立も、安心と信頼がない限りは備わっていかないんだ、と知りました”
“パピーさんが言われているように「ゆっくりゆっくり」ですね(^^)”と。
はい、自立は時間を掛けてできるようになってくれればいいんです。
まったく急ぐ必要はなく、特に幼少期は「振り返るといつも親がいる」ぐらいがいいんですね♪
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【 パピーいしがみ 】人材育成の現場から、育児・子育てこそが、本人の一生のベースになると痛感し、吸収したノウハウやアイデアを自分の3人の子育てに応用。子供達が喜びと自信を持って成長していく中で、親としての充実感と予想をはるかに上回る結果に驚愕する。2003年あまりの少年犯罪の多さ、幼児虐待の事件に心を痛め、その子育て育児方法をインターネットで公開。熱烈なサイトのファンからの要望で、テキストを作成し通信講座として紹介。著書も好評で現在は会員さんから毎日届く悩みや相談に応えている。