第1163号 諦めなければ夢は叶う?
こんばんは。パピーいしがみです。
今日のお話は「諦めなければ夢は叶う」です。
これってオリンピック選手や、成功をした方々などがよく口にしますよね。
以前、AKB全盛期の時に高橋みなみさんも熱を込めて話していたのを思い出します。
これって子供達を鼓舞したり、頑張っている子をさらにやる気にさせるにはいい言葉なのかもしれませんが、私は「う~ん、ちょっとな~」と思うのです。
同じようなご相談を頂いていましたので、私がお返事した内容も含めてご紹介しますね。
ココから・・・
パピーさん。お世話になります。トーコと申します。
ご相談したいのは、野球を続けてきた息子の「やる気がない」事です。
もう私では子供のやる気を高めてあげる事ができないようなのでご相談させてください。
長男は2年生の頃から野球をやっていて、今、5年生です。
パパが高校野球をやってきた人でもあり、小さな頃からキャッチボールをしたり、トスバッティングをしたり、時間があると付き合ってくれていたので、
長男は野球がとても好きになり「プロ野球の選手になりたい」という夢を持ちリトルリーグに入りました。
2・3年生の時には上手な方だったのですが、学年が上がるにつれて周りの子達との差が無くなり(体も小さいので)試合でも打てなくなりました。
自発的に練習もしていて、素振りをしたり、ランニングするような前向きな子だったのですが、野球の成績が悪くなるとその自主練もしなくなりました。
パパも「そういう時もある。続ければ必ず打てるようになる」と言っているのですが、本人は自分に限界を感じているようです。
監督さんがパパの先輩でもあり、気にかけてくださっているのですが、その監督さんがとても熱くて、厳しい方なので練習の度に怒られます。
なんとか発奮させようとなさる思いは分かるのですが厳しい言葉がけっこうきつく、スランプの息子にはぐさぐさ刺さるようです。
そして「諦めなければ夢は叶う!」が口癖です。
監督さんは、子供のころから甲子園出場を目指していて、立派にその夢をかなえておられます。
ノック練習でも取れない球は途中で追うのをやめてしまうので「諦めるな!」「諦めたら終わりだぞ」と怒号が飛びます。
練習は週に2回で、パパか私が付き合い、時々行われる試合には夫婦で見に行くようにしています。
以前は喜んで行っていた練習も、今は時間ギリギリになって重い腰を上げるような状態ですし、練習自体もあまり楽しそうではありません。
練習が終わるとへとへとで、お風呂で寝てしまうぐらい疲れているのが分かります。
先週、ミーティングがあって(親も参加しました)そこで又、監督さんが「諦めない気持ちを子供に教えたい」そして口癖の「諦めなければ夢は叶うんですから!」と言われました。
帰り道、車の中で息子は「夢は叶うか・・・」とボソッと言いました。
私が「えっ?」というと「ううん。なんでもない」とうやむやにしましたが、監督さんの言っている事も響いていないようです。
私としては、又やる気を出して頑張ってほしいと思うのですが、どんなに親がやらせようとしても本人にその気が起きないようですし、
息子がパパに遠慮して言いたいことも言えないんじゃないか?とも感じています。
こういう時、どんなふうに話をしてあげたらいいのでしょうか?アドバイスを頂けると嬉しいです。
ココまで・・・
「プロ野球選手になる」という夢をもって頑張っていた息子さん。
でも今の成績から「こんな状態じゃあプロはムリだよな」って感じたのかな?
でもどうやら息子さんからの言葉は、まだお父さんもお母さんも聞いていないみたいです。
なので、こんな風にお聞きしました。
ココから・・・
トーコさん、こんにちは。パピーいしがみです。
長男さん、ちょっと様子が心配ですね。
もう少し今の状況を教えてほしいのですが、まず長男さん、元気のないのは野球の時だけですか?学校ではどんな様子でしょう?野球以外は元気なのでしょうか?
そしてご主人はどうでしょうね?もともとご主人が野球をやっていたとすると、多分子供に野球をやらせたいとお考えになったのはご主人でしょうし、
もし本人が辞めたい、と言った時には理解してくれるでしょうか?もしかして頭から反対するような事はありますでしょうか?
なぜそれをお聞きするか?というと、今の息子さん、自分の気持ちを言えない状態ではないのかな?と感じたからです。
親が子供に熱心にやらせようとする事って、子供からすると「辞めたいなんて言えないな」と思っている事が多く、
もしその思いがあまり強ければ、普段の態度にも身が入らなかったり、生活全般にもやる気のなさが表れてしまいます。
まだ息子さんと今後の事を話し合った様子ではないみたいですし、トーコさんも「頑張ってやる気になってほしい」と願っている段階のようですが、
私は本人が「今どう思っているか?」をまずは聞かなくてはならないのでは?と思うのです。
それと「諦めなければ夢は叶う」についてですが、これはどのようにお考えでしょうね?
オリンピック選手など、子供のころからの夢を現実にした人たちが口々に「諦めなければ夢は叶う」と言うので、多くの人がそれを信じていると思うのですが、
現実は夢をかなえた人にインタビューをするから、そう答えるのであって“諦めなかった人=夢を叶えている”のではないのです。
例えば甲子園出場。例えばサッカーの選手権優勝。そんな目標を掲げて、中学から親元を離れて寮生活をしてきた子供たちはいっぱいいます。
中学から・・・って一言で言いますが、小学校6年生。12歳で自分の進路を決めて親から離れて生活するってすごい決意です。
それだけの決意を持って、スポーツに打ち込み、諦めずに毎日努力をしてきた子供たち。
なのに選手に選ばれないケースもありますし、県の大会で一校しか選ばれないのでしたら、その県だけでも何十校、何百人もの子が「諦めなかったのに叶わなかった」という経験をするのです。
それはスポーツだけでなく勉学でも同じです。
なりたい仕事、行きたい大学を目指して諦めずに努力してきたけどダメだった、何年も留年してチャレンジしたけどダメだった、というケースは本当にたくさんあります。
なので私は「諦めなければ夢は叶う」なんて言葉は(美しいけど)あまり口にしてほしくないな~と思っているのです。
だって「諦めなければ夢は叶う」って真実ではない(ウソ)なのですから。
でも『諦めずに頑張る』ことはとても尊いし、その経験はこの先必ず生きてきます。
特に厳しい部活を乗り越えた人たちは「あの時の辛さを考えたら、今、乗り越えられないものはない」と口々に言います。
それは今後の人生で挫折した時、落ち込んだ時、自分を奮い立たせる力になってくれます。
ですから監督の言われる「諦めない気持ち」はとても大事ですし、そこは私も大いに共感する部分です。
ですが、まずは本人の様子。そしてお父さんの気持ち。「諦めなければ夢は叶う」についてトーコさんはどうお考えか教えてくださいますか?
ココまで・・・
上記のようにお聞きしたら、まずは息子さん、学校ではとても元気で運動よりも体育が得意。友達も多く、スポーツテストではいつも成績が良いそうです。
そしてご主人に「もし野球を辞めたいと言ったらどうする?」と聞いたらとても残念だったようですが、「本人にやる気がないのなら強制はしない」という返事が返ってきたそうです。
そしてトーコさん自身の「諦めなければ夢は叶う」については、トーコさん自身もその言葉をそのまま信じておられて、ご自分も子供さんを発奮させるように言ったこともあったのだそうです。
なので私の“「諦めなければ夢は叶う」はウソ”にうついては、かなりショックだったと言われていました。
そしてご主人が熱心で野球を続けさせたいとお考えなのだと思っていたら、
トーコさん自身にその気持ちが強くて、息子さんのやる気のなさにイライラしていてなんとか復活させたい!と強く思っていた、という事が分かりました。
それを踏まえて、私はこんなお返事をしました。
ココから・・・
トーコさん、お返事ありがとうございました。
そうでしたか、トーコさんも熱心に息子さんには野球を続けさせたいとお考えだったんですね(^^)。
そして本人は学校では元気で、運動も好きなようですし、ご主人も強制するつもりはなく、本人の気持ちを一番に考えて下さっているようです。
でしたら、今やってもらう事は、まず息子さんと話す事だと思います。
それは「やる気にさせよう」とするのではなく「あなたはどう考えてる?」と聞いてほしいのです。
トーコさんが野球に熱心だったとしたら、きっと今まではどちらかというと「もっと頑張ってほしい」とか「説得しよう」となさっていたのでは?と思います。
頂いたメールも「もう私では子供のやる気を高めてあげる事ができないようだ」と言われていましたものね。
ですが、こちらの気持ちが強ければ強いほど、子供は従いたくなくなります。
これはイヤイヤ期の子供でも同じ。私たち大人でも同じ。自分の意思を持ち始めた息子さんはまさに「真っ只中」です。
トーコさんの願いはそこではなかったとは思いますが、ご主人も強制するつもりはないようですし、ここは本人の気持ちを素直に聞いてあげるのが良いと思います。
もちろん「辞めたい」と言うかもしれません。
でもすぐに結論を出すのではなく「1週間考えてみて」と答えを急がずに本人にじっくり考えさせて、自分で判断させる事をしてほしいのです。
それと「諦めなければ夢は叶う」について、息子さんも疑問を持っているようですから、ここのところは「それは真実ではない事を知った」と正直にお伝えいただきたいです。
ただ息子さんが体育が得意だったり、スポーツテストで成績が良い事は、今まで野球を頑張ってきたおかげだと言えると思います。
やる気があっても無くても、今まで野球を続けて走ったり、投げたり、バットを振ったり。それが体を作っているんですね。
監督さんの行った「諦めなければ夢は叶う」はそのまま正しいわけではないけど、
「辛い練習を乗り越えること」や「諦めないこと」を続けてきたその実績は今、きちんと出ている事は話してあげて欲しいのです。
でも何より大事なのは“あなたの気持ち”であり「もし辞めたいのならお父さんもお母さんも反対はしない。自分の人生だから自分で決めればいい」と。
そして最後に一言。「でもお母さんは、あなたが輝いている姿をもう一度見たい」とだけは付け加えても良いと思います。
今まではお母さんの気持ちが言葉の大半だったと思いますが、例えば営業の世界では「自分の話を15%以上話したら失敗する」と言われます。
それは人は“自分で判断したい”からなんです。だから人から説得されたり、命令されたくないんですね。
もう息子さんは何でも自分で判断できる年齢です。
誰かに説得されても自分で「それって違うよな」と感じれば、従ってもイヤイヤで、そこに良いパフォーマンスは期待できません。
ですから今までの息子さんの頑張りを認め、その上でこれからどうするか、本人に決めさせてあげて下さい。
ご希望の結果になるかどうか?は分かりません。
ですが、子供は真剣に考えると思います。そして自分で結論を出して、本人もスッキリするはずです。
もしかしたら何か、やりたいことが他に見つかるかもしれませんからね。今までよく頑張った♪と息子さんの頑張りを褒めて話してあげて下さいね。
ココまで・・・
このようにお返事した後、トーコさんからご報告を頂きました。
さて息子さん・・・どう結論を出したでしょうか?
ココから・・・
パピーさん、お返事をありがとうございます。
メールを読ませて頂いて「やっぱり自分都合の言い方だったな~」と感じました。
野球はもう生活の一部になっていて、保護者の方とのつながりもありますし「この頃〇君、パッとしないよね」と言われたり、
「なんかやる気が見られない」と指摘されることが気になっていて「やるなら頑張りなさい」「やる気がないなら辞めてしまいなさい!」とまで言っていました。
どう言えばやる気になってくれるのか、なだめたり物で釣ったり、怒ったり、監督さんの言葉を引用したりもしましたが、でも、どれをやってもやる気を引き出す事はできませんでした。
パピーさんから「こちらの気持ちが強ければ強いほど、人は従いたくなくなる」
「誰かに説得されても自分で「それって違うよな」と感じれば、従ってもイヤイヤ」など、
まさにその通りで、そういえば息子が運動が得意な事や今まで頑張ってきたことなど、全く伝えてはいませんでした。
本人が辞めるって言ったらしょうがない、と覚悟を決めて、2年生から本当によく頑張ってきたことや三塁打を打って逆転で勝った時はすごく嬉しかったことなど、
子供を批判するのではなく「こんな事があったね」「あんな事があったね」と思い出を話しました。
そしてパピーさんに言われたように「諦めなければ夢は叶う」は間違いだった事を知った事も話しました。
監督さんの言葉をそのまま信じていたけど、それは正しくないってことが分かった、と伝えました。
それでも今まで努力してきたことはあなたを作っているし、辛い中で頑張ったことで根性は鍛えられたはず。今後落ち込んだ時には絶対に力になるという話をしたら、それは深くうなづいていました。
そして最後に「お母さんは、あなたが輝いている姿をもう一度見たい」とだけ伝え、後は自分で決めて教えて欲しいと伝えました。
その直後の練習では、雰囲気が変わっていてノックも怖がらずに体で当たったり、ダラダラ走っていたのもきびきび動いたり。あきらかに動きが違いました。
そして練習終わりに監督さんに「〇!スランプを脱出したみたいだな。これから強くなるぞ!」と言ってもらいました。
約束の1週間が過ぎて「どうするか決めた?」と言ったら「う~ん、もう一年やってみようかな?」「スランプを脱出したらどうなるか楽しみだし」という返事でした。
男の子ですから、成長するにしたがって無口になりましたので、本当の気持ちは私にはわかりませんが、見るからにイヤイヤだった顔つきはなくなり、ちょっと目の輝きが変わってきたように感じます。
指摘や強制はダメだ、と勉強したはずなのに「復活してほしい」それ一辺倒で、息子を焚きつけようとしていたのも本人はわかっていたんですね。
パピーさんが「本人はスッキリするはず」と言われたように、この一件があってから、よく食べるようになりました。
それと「諦めなければ夢は叶う」はウソだとはっきり言っていただいて、私も変に期待するのは止めよう!と気持ちに整理がつきました。
親は子供をコントロールするのではなく、あくまで応援ですね。今回は身をもって学んだ気がします。
これからも続くかどうか、新しい何かを探すのか?は分かりませんが、子供の一番の理解者として応援していこうと思っています。
貴重なお話をありがとうございました。
ココまで・・・
息子さん、結局、野球を続ける事を決めたようですね。
今度は自分で決めたので、練習の質も変わっていくと思います。
でもこうやって「自分で考える」事や「自分で判断する」という事がとても大事で、ちょうど今、子供から大人になる息子さんの年代でおきやすい事なんですね。
又、「辛い中で頑張ったことで根性は鍛えられたはず。今後落ち込んだ時には力になるという話をしたら深くうなづいていた」とあったように、
少なからず、息子さんはそこに手ごたえを感じているはずです。
運動をすることで、筋肉や骨格など体の成長の役に立つのは知られていますが、私としてはこの「辛い時に踏ん張る力になる」事が大きなメリットだと思っています。
よく「メンタルはどうやったら強くなりますか?」と聞かれることが多いですが、一つにはこの「自分は、あの辛い時ものり切った!」という思いだと私は考えています。
トーコさんの息子さんも、ここを乗り越える事で、メンタルのステージが一つ上がったのでは?と思います。又、これからが楽しみです(^^)
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【 パピーいしがみ 】人材育成の現場から、育児・子育てこそが、本人の一生のベースになると痛感し、吸収したノウハウやアイデアを自分の3人の子育てに応用。子供達が喜びと自信を持って成長していく中で、親としての充実感と予想をはるかに上回る結果に驚愕する。2003年あまりの少年犯罪の多さ、幼児虐待の事件に心を痛め、その子育て育児方法をインターネットで公開。熱烈なサイトのファンからの要望で、テキストを作成し通信講座として紹介。著書も好評で現在は会員さんから毎日届く悩みや相談に応えている。