第1197号 ゴールデンエイジ
こんばんは。パピーいしがみです。
すでにご存じだと思いますが、9月5日に登園バスで置き去りにされ3歳の園児が亡くなった事件がありましたね。
起きたのは、なんと私が住んでいる静岡県。
市は違いますが、ニュースで「静岡」「静岡」と言われるたびに切ない思いをしていました。
昨年も福岡で全く同じケースで亡くなった子がいたのに、同じ過ちが又、繰り返されてしまうなんて・・・。
テレビでは全国ネットで連日報道されていますが、発見された時には、水筒が空になっていて、上半身が裸だったことから、
暑くて服を脱ぎ、朝、いっぱいだったはずの水筒が空になるまで、何度も何度も水分補給をしたんだろうな・・・と考えると胸が締め付けられる思いです。
なのに運転手だった園長の誠意のない言動や、他人事のような態度、日常のずさんな管理などが明らかになって・・・。
亡くなった千奈ちゃんのご冥福を心から祈りたいし、大きく落胆しているだろうお父さん、お母さんには、なんとかこの悲しみから乗り越えて欲しいと願わずにはいられません。
ただ、こういうバスの置き去りってい事故にならなくても、今までも頻繁にあったようです。
最近は園バスって当たり前に準備されていますが、かつては今ほどメジャーではありませんでした。
ところが園バスがあった方が、その園を選んでくれる親御さんが多い事。
また、広い範囲から園児を集められるなど経営上の理由から、急速にその需要は高まったのでした。
ただね・・・。園バスってみなさん「安全」だと思われていますが、交通事故のリスクは、他の自動車と同じですし、
一旦預けたら『親が何とかしてあげる事ができない』という大きなデメリットもあるんです。
園バスはとても便利です。でも便利だからこその落とし穴があって、
車のカギを閉める前に、ざっと一回り確認するだけでも事故は防げるのに、その簡単な確認を忘れただけで、今回のような命に係わる大きな事故になってしまうんですね。
『ヒューマンエラー』では片付けられません。
私はかねてから“できれば子供を園まで送ってほしい。近くだったら手を繋ぎながら歩いて登園してほしい(子供との時間を作る意味も含めて)”とお願いしてきましたが、
もしお子さんが園バスで通われているならば、幼稚園の改善を望むだけでなく、一度「親ができる事は無いかな?」って振り返ってみてほしく思います。
通園を子供と一緒にすると、登園までの毎日が思い出になったり、道草をしながら自然に触れたり、外の風や空気や季節の匂いを感じり、とても良い時間が過ごせます。
できたらご一考頂きたいです。
さて・・・今日のメルマガは「ゴールデンエイジ」としました。
この「ゴールデンエイジ」という言葉、もしかしたら初めて聞く言葉かもしれません。
直訳すれば「黄金の年齢」という事になるのですが、子供達が成長してく段階で、その年齢ごとに成長・開発されやすい時期(最適な年齢)がある、という事で、
それぞれの伸びやすい最適な時期を「ゴールデンエイジ」と呼び、そこに最適な環境を準備しようとする考え方です。
特にスポーツ科学では、とても注目されていますが、スポーツだけではなく、脳の神経回路の構築に役立つので、勉強にも有益な事が分かっています。
例えば、ご自身に置き換えてみても、子供の頃は遊んでばっかりいた子なのに「なんで突然できるようになったの?」とか「え~?あの子〇〇大学受かったの?」なんて、驚くことってなかったでしょうか?
また、東大・京大など難関大学に通っている学生に「小さい頃から勉強をしてこられたんですよね?」なんてインタビューすると、
「いえ僕の小さい時は、ほとんど勉強なんてしなかったんです」とか「子供の頃は遊んでばかりいました」なんて答えが多かったりします。
私は早期教育はお勧めしない派で、幼稚園・小学校低学年では、勉強よりも大事な事があるよ・・・とずっと言い続けているのですが、
今、子供の外遊びが減ってきて、幼少期にたっぷり遊んだ子と、幼少期から勉強を頑張ってきた子との比較ができるようになり、
なんと子供のころから塾や勉強を続けてきた子よりも、その時期に合わせて適切な対処(遊びや運動)をしてきた子の方が急激に伸びたり、他の子と差を付けたりすることが分かってきました。
その「適切な対処をする時期」の事を“ゴールデンエイジ”と言うのですね。
※ちなみに『ゴールデンエイジ』は、人生に一度しか訪れません。
また、20代の社会人の子供を持つ親1000人を対象にした調査で「小学校入学前の子育てで意識してきたこと」という問いについては、
偏差値68以上の大学に合格した子供の親は35.8%が「思いっきり遊ばせること」と回答したそうです。
さまざまな調査から「運動ができる子は勉強もできる」ということが分かってきているのですね。
そして幼少期の遊びと、脳の発達が関連付けられていて、この「ゴールデンエイジ」に何をするか?が注目されているのです。
ではゴールデンエイジとはいつのことなのか?なのですが、
まずゴールデンエイジは、大きく見て4・5歳~11・12歳の年齢のことを言いますが、
4・5歳~7・8歳を“プレゴールデンエイジ”と呼ばれて、ゴールデンエイジに目覚ましい成長をする為に、この“プレゴールデンエイジ”がとても重要なのです。
なぜか?と言うと、子供の成長スピードは体・心・性機能・脳神経など、それぞれで違うからです。
例えば、身長や体重、筋肉、骨格など、体を形作るものの成長スピードは、0歳から4歳ぐらいまでが急激に成長し、
又、11歳ぐらいから16歳ぐらいまでにもう一度急激な成長があります。(2段階の成長があります)
逆に男性や女性としての成長(男性の声変わりや、女性の体形など)は、生まれてからしばらくはほぼ無いものの、12歳ぐらいから急激に成長をします。
そして脳や脊髄、視覚器官などの神経系や感覚系統の発達は、生まれてから急激に発達し、なんと6歳ごろまでには大人の9割に迫る成長をするとされています。
(スキャモンの発育曲線が有名です)
運動はもちろんのこと、学びでも重要な脳の開発が生まれてからの数年だとしたら、この時期の環境がどれだけ大事か?という事がお分かりになると思います。
“プレゴールデンエイジ”は、神経系の発達、体の成長と、2つの急成長が重複している貴重な時期なのです。
では、その時期に何をするのがいいのか?と言いますと、ずばり「体を動かす遊び」なのです。
何も難しい事はありません。木登りをしたり、追いかけっこをしたり、缶蹴りをしたり。ひと昔前はどの子もやっていた遊び。そこから子供達は多くを学ぶのです。
夢中になって遊び、思いっきり体を動かし、夜は疲れてコテンと寝る。それがこの「プレゴールデンエイジ」の最適な過ごし方なんですね。
ところが親の「早く始めた方が有利のはず」「遊んでいる時間があるのなら勉強してほしい」という思いで、
バイオリンのお稽古に何時間も費やしたり、英語習得に躍起になったり、お受験の為の塾に入れたりという話をよく聞きます。
その度に私は「あ~、今は、そのタイミングじゃないのに・・・」と思うのです。
いえいえ、体を使った遊びがある中で、習い事や英語があるのならいいのです。
でも「遊びよりも塾や英語、音楽を・・・」とのお考えが正しくないんですね。
ちなみに高嶋ちさ子さんってご存知だと思います。名門、桐朋学園を卒業し、イェール大学に留学して、
今は、たぶん日本で一番多くの人が知っているプロバイオリニストで、知名度からしたら葉加瀬太郎さんを上回ると思いますが、
高島さんは音楽一家で育ち、子供の頃はお母さんが大変厳しくバイオリンを教えられたと言われています。
ですが本人の性格もあり、幼少期はめちゃめちゃやんちゃで男の子を従えるほどのガキ大将。
10歳の頃は腹筋が割れていた(とご本人がTVで仰っていました)ほど、遊びまくっていたのです。
ちゃんと?ゴールデンエイジを過ごされてきているんですね。
ところが、ここ数年のコロナ禍。もともと外遊びが減りつつある社会環境の中で、さらに外遊びが禁じられたこともあり、
ちょうどゴールデンエイジに差し掛かってきた子供たちは、体を動かすことが極端に減っているのです。
だからこそ、今、足りなくなっている「体を動かす遊び」を是非、増やして頂きたいと思うのです。
今から5年ほど前、お子さんが5歳だったYOUKUNママさんは、当時、朝起きたら朝食までにプリント2枚。
幼稚園から帰ると英語塾と勉強の塾。そして週に2回のスイミングをされていました。
でも子供が「全部いや」「全部やめたい」と言い出して、どうしたらいいかのご相談を頂きました。
ちなみに外遊びの時間を聞いたら「幼稚園で遊んでいるので運動は十分だと思います」とのお返事と、
習い事の多さは「他の子よりも早くから始めた方が、メリットがあると思って・・・」というお気持ちがあることをお聞きしました。
当時はまだ「ゴールデンエイジ」の考え方は無かったのですが、
私は成長曲線の事をお話しし、運動と脳の成長が連動している事、幼少期の勉強は本人のやる気を失うと“有利”どころか“不利”にもなる、と言うお返事をしました。
それから数年が経ち、頂いたご連絡にはこうありました。
ココから・・・
パピーさん、お久しぶりです。
当時、ご相談させて頂いてから早くも5年が経ちました。
私の偏った考え方に一石を投じてくださって、ありがとうございます。
実は主人にも「そんなに勉強させなくていい」と言われていましたが「やりたい!」と本人が言い出し、始めたことと、
どんどんできるようになっていく様子から、私が暴走してしまっていました。
パピーさんから成長曲線の説明をして頂いたり、幼少期に始めた勉強もやる気を失ったら、勉強をしなかった子よりできなくなってしまう可能性もあると聞いて、
自分が早期教育に熱が入り過ぎてしまっていたと冷静になれました。
塾でお会いするお母さん達がみなさん熱心で、息子よりももっと習い事(ピアノなど)をさせている家もあったので「もっと増やさなきゃ!」ぐらいの勢いでした。
子供が「全部やめたい」と言い出した時には、きつく叱ってしまったのですが、
せっかくここまでやってきて・・・という思いもあって、何とか続けさせたいと考えていたところ、パピーさんから
「メインを“体を使った遊びに”して、英語塾も“英語遊び”のつもり。勉強も“数字に親しむ”の思いでぐっと減らせるのなら、続けられると思いますよ」
と言われて、私が過度に期待をしすぎず、子供にも成績いかんで怒ることをせず「楽しみながら続ければいい」と意識するようにしたら、
最初はあれだけ嫌がっていた英語もプリントも辞めることなく続けられ「これが終われば遊びに行ける」と、パパっと終わらせるようになりました。
それでも最初は「本当に幼少期の遊びが、その後の学びに役立つのかな?」(パピーさんを疑うわけではないのですが…すみません)と
調べてみると、かなり多くの記述があり、塾の先生や巷のうわさ(少しでも早く始めた方が有利)に踊らされていたと知って唖然・・・でした。
小さい頃は『勉強よりも遊びが大事』と知ってからは、子どもの遊びを肯定し、勉強面をぐっと減らしたためか、
小学に入っても勉強嫌いにはならず、宿題と数枚のプリントを終えたら、すぐに遊びに向かいます。
学校では、運動もできるし、勉強も悪くない、友達も多くて、女子からの人気もある(本人談)と言っていて、毎日学校での様子を聞くのが一番の楽しみです。
もしパピーさんに相談せず、あのまま勉強だけをさせていたら、こんな幸せな気持ちにはならなかっただろうな~と思うと、あの時の貴重なアドバイスがとてもありがたいです。
コロナが下火になってはきましたが、私の周りでも陽性者がけっこういます。
パピーさんもお体に気を付けて、今のお仕事お続けくださいね。今後ともよろしくお願いします。
ココまで・・・
そうなんですね。
YOUKUNママさんも「塾の先生の言葉や巷のうわさ(少しでも早く始めた方が有利)に踊らされていた」と書かれていましたが、
やはり多くのお母さん、お父さんに「早く始めた方がいいのだろう」との考え方があり、
それが早期教育の需要を高めた、という事もあって、今、本当に多くの早期教育が生まれています。(需要と供給が合致している、という事です)
それに何でもすごいスピードで吸収する時期の子供ですから、急速に習得していく子供を見ると、親としては期待しちゃうんですよね。
でも、本当はそれって「親の満足」を満たすためのものになっている事が多く、実は子供にはあまりプラスにならなかったりします。
そして「学ぶタイミング」の事を考えると、「今じゃない」って分かるし、さらに深く知っていくと、もっと大切なものが有ることも分かります。
新しいことを吸収するのは決して悪くありません。
でもまずは本人が楽しくできているか?興味をもって取り組んでいるか?大事なものを犠牲にしていないか?は見て欲しいのですね。
必要な時期に、必要な事を学ぶ。それが最も自然で、最もプラスになると私は考えます(^^)。
過去に「遊びがこんなに大事」と、参考になる記事も書いていますので、よろしかったらお読みくださいね。
https://www.age18.jp/back603.html
https://www.age18.jp/back604.html
https://www.age18.jp/back605.html
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【 パピーいしがみ 】人材育成の現場から、育児・子育てこそが、本人の一生のベースになると痛感し、吸収したノウハウやアイデアを自分の3人の子育てに応用。子供達が喜びと自信を持って成長していく中で、親としての充実感と予想をはるかに上回る結果に驚愕する。2003年あまりの少年犯罪の多さ、幼児虐待の事件に心を痛め、その子育て育児方法をインターネットで公開。熱烈なサイトのファンからの要望で、テキストを作成し通信講座として紹介。著書も好評で現在は会員さんから毎日届く悩みや相談に応えている。